世界のビジネススクールで最も重要な主力科目
トップページでは、当研究所ISCFがコーポレートファイナンス理論を基盤として企業経営にまつわる謎を語ると言ってますので、コーポレートファイナンス理論とはなにかについてお話しておく必要があります。
今ではだれもが企業価値という言葉を使うようになりましたが、この概念を生み出したのがコーポレートファイナンス理論であり、世界のビジネススクールでは最も重要な主力科目のひとつとなっています。多くのビジネスマンにとって必須の知識と言えるでしょう。
意外とむずかしいコーポレートファイナンス理論の定義
ただ、コーポレートファイナンス理論を一言でサクッと言い表すことは意外と至難の業です。というのも、おそらく欧米のビジネススクールで最も読まれている代表的な教科書、リチャード・ブリリー、スチュアート・マイヤーズ、フランクリン・アレンの三人による『コーポレートファイナンス』は11部34章にわたり、日本語版では上下巻それぞれ900ページ近くに及ぶボリュームです。つまり、それほど広い範囲をカバーした理論です。仮にこの教科書はじめ他の教科書やさまざまな学術論文を参考にして、少しだけ背筋を伸ばしてアカデミックにコーポレートファイナンス理論を定義するとこんな感じになります。
コーポレートファイナンス理論とは、企業を不完備市場・情報非対称性・契約不完備性が支配する制度的環境に置かれた経済主体として捉え、その資本構成・投資・配当・統治構造に関する意思決定が企業価値の確率過程および利害関係者間の配分効率に与える影響を、最適化問題として形式化・分析する理論体系である。
これはなかなか網羅的で正確で、私としては気に入っている表現なのですが、今からコーポレートファイナンス理論を学ぼうとする学生にこんなこと言ってしまったら、もう次の講義から出席者はいなくなってしまいます。そこで、私がいつも大学生向けに話をするコーポレートファイナンス理論の、あくまでイメージを次のようなたとえ話で表現してみます。教室に座っている大学生になった気持ちで聞いてください。
もしもテニスボールを作って売りたいなら?
仮にですが、キミがテニスボールを製造して販売する会社の経営者になるとしましょう。まずおカネが必要ですよ。商売の元手です。これを専門用語で資本と呼びます。誰に資本を出資してもらいますか?その出資者はなぜキミの会社に出資をしてくれるんでしょう?キミはその出資者をどのようにして説得して出資をしてもらいますか?
仮に出資してもらうことに成功したとしましょう。次にキミがやらなければならないことは出資してもらったおカネで事業に必要なものを手に入れることです。これを専門用語で資産と呼んでいます。どこからテニスボールの原料を買い付け、どんな機械を購入し、どこに工場を建てて、どんな人材を雇えば会社がうまくいくでしょうか?
仮にすべての資産がそろってテニスボールの製造販売事業が立ち上がったとしましょう。でもテニスボールを販売している会社は他にもあります。どうやってライバルと戦い、お客さんを獲得しますか?テニスボールを他社より安く売るにはどうすればいいでしょう?あるいは他社より少し高くてもお客さんがライバル企業ではなくてキミの会社からテニスボールを買ってもらうためにはどうすればいいでしょうか?なにかアイデアないですか?
仮に事業がうまくいっておカネが入ってきたとしましょう。そのおカネどうしますか?もっとテニスボールを作るために工場を拡大しますか?それとも出資者に返しますか?それとも緑化運動のため木を植えますか?稼いだおカネをどう使えば世の中のために最も役立つと思いますか?キミのアイデアを聞かせてください。
経営者の目線で企業を見ること
企業は資本を調達し、資産を買い付け、事業を行い、お金を稼ぎます。この過程で企業は世の中に価値をもたらします。いかにして資本を調達し、どこにどのような資産を持ち、どのような戦略を実行し、稼いだおカネをどのように使うか。きっとうまくいく経営とうまくいかない経営があるはずです。それが企業価値に現れます。コーポレートファイナンス理論では、企業の動きをつぶさに分析し、それを価値として表現する理屈を学ぶことになります。
いかがですか?面白そうでしょ?経済学部や商学部にはいろいろな科目がありますが、株式会社というものを経営者の目線から大きく包括的に、しかも理論的に俯瞰し、そして具体的に評価できるのはコーポレートファイナンス理論だけです。だから、企業経営の謎を語るなら、この理論は避けて通れません。これほど面白い学問を、私は他に知りません(そう言えるほど他の学問を知っているわけじゃないけど)。
